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第13話 あなたの優しさは、今ではない①

作者: なつめ
last update 公開日: 2026-07-21 08:50:31

 その夜会へ出る支度をしている時から、リリアーナは少し嫌な予感がしていた。

 胸騒ぎ、というほど大げさなものではない。もっと地味で、もっと身体に近い感覚だ。朝から食欲が薄く、昼に口へ入れたスープも半分ほどしか喉を通らなかった。曇ったままの空は夕方になっても晴れず、窓の外の色はずっと鈍い。湿り気を含んだ冷たい風がときおりガラスを鳴らし、そのたびに肩のあたりが無意識に強張る。

 今夜は王都の中でもそれなりに大きな夜会だった。

 王家に連なる遠縁の伯爵家が主催する、春先の親睦を名目にした集まり。まだ本格的な社交季には少し早いが、そのぶん招かれる顔ぶれは濃い。大物ばかりではない。けれど、貴族社会の空気がどう動くのかを敏感に嗅ぎ取る者たちが集まる場ではある。

 つまり、今のリリアーナにとっては最悪に近い。

 冷徹侯爵が婚約者を溺愛しているらしい。

 だが未来の義母は、その婚約者をどうも軽んじているらしい。

 婚約解消の噂も、一度は流れたらしい。

 しかも当の侯爵本人が、わざわざ伯爵家まで足を運んで止めに来たとか。

 そんな、甘いのか険悪なのか分からない噂が、今の王都には妙に心地よく流れ
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